斫り(はつり)のカッター入れは角度で変わる!垂直・内側・外向きの違いと切り付けを減らすコツ

こんにちは!湘南ユーテックです!
以前書いた記事「カッター入れ作業の基本」では、墨に対して刃の側面を沿わせて、ブレずに真っ直ぐ切るコツを紹介しました。
その記事のコツ③で少しだけ触れたのが、今回のテーマの【刃の角度】です。
真っ直ぐ切れるようになってきたのに、
「墨どおりに切ったはずなのに、斫ったら出っ張りが残る」
「カッター際の切り付けにやたら時間がかかる」
という方は、もしかすると刃の角度が原因かもしれません。
今回は、斫りを始めたばかりの職人さんや、たまにしかカッターを入れない方に向けて、同じ腰壁の模型と断面図を使いながら、刃の角度でどう変わるのかを解説していきます。
私も常に練習だと思いながら、少しでも手直しの少ない斫りを目指して奮闘しております。
この記事でわかること
- 斫り墨(カッターライン)が「仕上げのライン」になる理由
- 垂直・内側・外向きで、切り付けの手間がどう変わるか
- 定規の当て方と、刃に角度をつける時の注意点
👉 斫り(はつり)作業に必須!コンクリートのカッター入れ作業の基本と安全対策!
・そもそも斫り墨は「仕上げのライン」
今回は、この腰壁を例にします。
高さ800mm、幅1000mm、厚み300mmの壁の正面を10mm斫り落として、補修で仕上げる工事をイメージしてください。

表面から10mm内側に斫り墨を打って、天端と左右の側面にカッターをぐるっと入れます。
深さはグラインダーの刃が入る30mmくらいです。

ここで大事なのが、この墨の意味です。
10mmは「削る深さの目安」ではなく、300厚の躯体を斫り、仕上がった時の厚みが290mmになる、という絶対のラインです。
つまり、カッターを入れた後の角(出隅)が、そのまま左官屋さんが仕上げる面の高さになります。
斫り終わった時点で、どこか1か所でも290mmより厚く残っていたら、補修でどれだけ綺麗に塗っても290mmには仕上がりません。


📌ここがポイント
斫り墨で切った角(出隅)= 仕上げの高さ。
ここより出っ張った所は、補修でどれだけ綺麗に塗っても直せません。
・上手い人が斫っても±5mmのデコボコは出る
必要な10mmは必ず落とすとして、次に考えたいのが斫った面のデコボコです。
ピックで溝状に繰り返し叩いて、どれだけ均等に斫っても、上手い人でも±5mmくらい(山から谷まで最大1cm)のデコボコは出ます。
これは腕が悪いわけではなく、コンクリートを叩いて落とす以上、どうしても出るものです。

ここで覚えておいてほしいのが、デコボコの「谷」と「山」の違いです。
- 谷(掘りすぎ)は、左官屋さんの補修材で埋まるので致命傷にはなりません。
⚠️雑に深く斫りすぎると左官材を多く使い、手間も増えるので嫌われます。 - 山(仕上げのラインより出っ張った所)は、そのままでは仕上がらないので手直しが必要です。
この「山をどう仕上げのラインの内側に収めるか」に、刃の角度が関わってきます。
・よくある入れ方:刃を垂直に立てると?
一番多いのが、刃を面に対して垂直に立てて入れるやり方です。
間違いではないのですが、そのあとの切り付けの手間がかなり増えますし、斫り残しの原因にもなります。

なぜかと言うと、垂直に入れると、カッターの切り口がそのまま補修の仕上げの面になるからです。
斫り墨が仕上げのレベルの場合、切り口の底から斫り始めると、±5mmの山はそのまま仕上げの面から飛び出してしまいます。
だから垂直に入れた時は、カッター際の山も全部、奥まで斫り込まないといけません。
際は基準の角に近いぶん、欠けさせないように気を使うので、ここが一番時間を食うところです。
👷私もやっていました
私も始めたばかりの頃は、経験不足でノウハウを持っておらず、垂直や、ときには外向きに刃を入れていました。
それに、慣れないうちは思った通りの角度で切るのが意外と難しいんです。
垂直に切っているつもりでも、切り終わってみると意外と外向きになっていた、なんてこともよくありました。
・✅残す躯体側に少しだけ傾けてカッターを入れる
そこで私が意識しているのが、残す躯体側(内側)に、少しだけ傾けて刃を入れることです。
ややこしいので、ここでは残す躯体側を「内側」、斫って補修する側を「外側」と呼びますね。

内側に傾けて入れると、カッター際の斫り出しが、最初から仕上げのレベルより奥からスタートします。
つまり、±5mmくらいの山なら、残っても仕上げの面から出ないんです。
墨の角(出隅)を「ここが仕上がりの一番高いところ」とイメージして、そこから刃をほんの少し内側に寝かせるイメージです。
斫る時は、そのカッターの切り口に沿って斫り始めればいいので、際で山を追いかける必要がありません。
それに、最初から少し内側を意識して入れておけば、多少ブレても外向きにはなりにくい、というのも慣れないうちには助かるところです。
些細なことに見えますが、この外周の斫り始めが違うだけで、作業時間が大きく変わります。
・模型で見ると一目瞭然!角度で「赤」が消えていく
言葉だけだと分かりにくいので、同じ腰壁の模型で、±5mmで均一に斫れた場合を再現してみました。
仕上げの面より出っ張ってしまう所を赤く塗っています。
垂直に入れると、±5mmの山がそのまま仕上げの面から出て、赤くなります。
そこから刃を少しずつ残す方に傾けていくと、ある角度で赤がすっと消えます。
右下の断面図は、壁の角を上から見たところです。
カッターの底を基準に±5mmで斫ると、垂直では山が5mm、仕上げの線(緑の点線)から出てしまいます。刃が残す躯体側に潜っていくほど、デコボコごと奥に下がっていくのが分かるかと思います。
±5mmのデコボコなら、このくらいの角度で山が出なくなる、というのが目で見て分かるかと思います。
☝️図の角度は、見やすいように大きめに描いています。実際に傾けるのは「少しだけ」です。
・定規は「辺と辺」を結んで見る
内側に入れたカッターラインは、そのまま斫りの基準になります。
定規を当てる時は、天端の出隅と側面の出隅、つまり基準になる辺と辺を結ぶように当てるのが確実です。
両端を基準に乗せてしまえば、間のすき間で一度に出っ張りがないか確かめられます。
辺と辺を結べない所だけ、一辺に当てて確認するイメージです。

外周の斫り込みが多いと、なかなか深さの基準が決まりません。
逆に基準が早くキレイに決まると、目視や定規で斫り残しにも気付けて、丁寧な作業につながります。
・「深く斫ればいい」じゃない!
ここまで読むと、「じゃあ心配だから全部深めに斫っておけばいいのでは?」と思う方もいるかもしれません。
ただ深くていいなら、誰でもできるんですよね。
全体が深くても、一部が出っ張っていたり、カッター際の切り付けが甘かったりしたら、左官屋さんは仕上げられません。
極端に言えば、「やっていない」のと同じことになってしまいます。
それに、深く斫れば深さを気にする手間は減るかもしれませんが、そのぶん次に入る左官屋さんの材料と手間が増えます。
深すぎない丁寧さと、自分が出せるスピードのバランスが大事だと、私は思っています。
こちらの記事👉 左官屋に褒められる斫り屋になろう、現場での評価は自分の価値に変わる! でも書いていますが、後工程の職人さんが仕事をしやすいかどうかは、そのまま自分の評価につながります。
・垂直でも深く斫れば同じじゃないの?
では、垂直に入れても、最初から深く斫り込めば同じなのでは?という疑問です。
理論上はそうです!
だから、垂直に入れるのが絶対に間違い、というわけではありません。
ただ、中は深いのに、カッター際の山だけ残っている人が結構多いんです。
それを平ノミで削って手直ししている人も、少なくありません。

結局、際の切り付けが必要になるので、それなら最初から内側に入れておいた方が手間が少ない、というのが今回一番お伝えしたいことです。
切り付けの注意点については、こちらの記事にまとめています。
👉 斫り(はつり)の定番!切り付け作業の注意点!
・一番やっかいなのは外向き(逆向き)
慣れないうちにやりがちなのが、逆向き、つまり外側に向けて刃を入れてしまうパターンです。
外向きに入れようと思って入れる人はまずいないと思いますが、先ほど書いたように、垂直のつもりが切り終わったら外向きになっていた、というのが一番多いかと思います。

この1cmの墨が、最後の補修の仕上げラインだと考えてください。
外向きに入れると、出隅から内側が、いきなり全面アウトになります。
どれだけ中を深く斫っても、カッターの面そのものがすでに出っ張っているので、定規を当てると切り口に当たってしまいます。
こうなると、カッターを入れ直すか、欠ける覚悟で出隅ギリギリまで斫るしかありません。
これは時間の大損失です💦
ここまでの3パターンを、同じ模型で並べるとこうなります。

刃の角度3パターンの早見表(補修を前提とした斫りの場合)
切り付けは最小限
切り付けが増える
入れ直しになりやすい
・用途によって刃の角度は変わる
ここまで「内側に入れる」話をしてきましたが、全部の作業で内側が正解というわけではありません。
✅ 縁切り・目地・Uカットは垂直が基本
カッターの切り口がそのまま仕上がりになる作業は、基本は垂直です。
施工事例👉 【ある日の施工事例】真っ直ぐ切るの難しい!一発仕上げのUカット
✅ 補修前提の躯体調整は内側
今回のように、補修を前提とした躯体調整の斫りは、残す躯体側へ少しだけ内側に入れます。
✅ 出隅の強度を保ちたい時はあえて外向きも
出隅の強度を保ちたい時や、角を欠けにくくしたい時は、あえて少し外向きに入れることもあります。
また作業によっては、補修レベルより多めにカッターを入れて斫ることもあります。
仕上がりや後工程をイメージしながら、その現場に合った角度を選ぶことが大事です。
面取りの角度については、こちらの記事で紹介しています。
👉 【斫り(はつり)屋】コンクリート面取り作業の方法とコツ【カッター作業】
・角度をつける時は刃の噛み込みに注意
刃に角度をつけると、まっすぐ入れる時よりも刃がこじれやすくなります。
無理に押し込むと刃が噛んで、フランジがガチガチに締まって外れない…なんてこともあります。
⚠️注意
⚠️角度をつける時こそ、力まず、急がず、刃の回転に任せて進めましょう。
もし刃が外れなくなってしまった時は、こちらの記事が参考になると思います。
👉 グラインダーの砥石交換「外れない」を減らすMITOLOYのピンレンチ!
・🎥動画でも解説しています
今回の内容は、同じ模型を使ってYouTubeでも解説しています。
垂直・内側・逆向きで何が変わるのかを順番に見比べられるので、動きで見たい方はこちらもどうぞ。
・🌟まとめ
✅ この記事のポイント
- 補修前提の斫りでは、斫り墨で切った角(出隅)が仕上げのライン
- 上手い人が斫っても±5mmくらいのデコボコは出る
- 垂直に入れると、切り口がそのまま仕上げの面。際の山を全部奥まで斫り込む手間が増える
- 残す躯体側に少しだけ傾けると、斫り始めが最初から仕上げより奥。山が残っても面から出ない
- 外向きに入れると切り口ごと出っ張り、入れ直しになりやすい(垂直のつもりが外向き、はよくある)
- 定規は辺と辺を結ぶように当てると、基準が早く決まる
- 「深ければいい」ではなく、後工程の左官屋さんのことも考えたバランスが大事
💡カッターだけで全部が決まるわけではありませんが、最初のカッター入れで、そのあとの作業効率ははっきり変わります。
全部の斫りの正解ではありませんが、覚えておいて損はないこだわりです。
今後も、ビギナーさんや、たまにしかやらない人に向けて、ためになるこだわりがあれば記事や動画にしていきたいと思います!
🌟斫り作業を行うためには、身を守るための適切な保護具の着用が必要です。こちらの記事にも載せていますので参考にしてみてください。
👉 【建設業】気持ちはわかるが、保護具は着用しよう!斫り屋・解体屋が現場で使う基本保護具まとめ
最後まで読んでいただきありがとうございました。

