忙しい現場職人へ:寓話「木こりのジレンマ」に学ぶ、仕事が遅い人・速い人の違い

こんにちは!湘南ユーテックです。
突然ですが、皆さんは「木こりのジレンマ」という話を知っていますか?
ある旅人が、森で汗だくになって木を切っている木こりに出会うお話です。
旅人
「大変そうですね。作業がなかなか進んでいないようですが、少し休んで、のこぎりの刃を研いだらどうですか? その方が早く切れますよ」木こり
「バカ言え! 俺は木を切るのに忙しくて、刃を研ぐ時間なんてないんだよ!」
どうでしょう、笑い話に聞こえますか?
おそらく木こりは、真剣に仕事を進めるために【目先の作業】に夢中で一本道しか見えておらず、
効率の悪さに気づかないまま進み続けている状態です。
でもこれ、実は現場での私たち自身の姿かもしれません。
「工期がない」「面倒くさい」「時間が限られている中で手を止めるのが怖い」
そう言って、切れ味の落ちた道具や、整理されていない環境で無理やり作業を続けていませんか?
今回は、この「木こりのジレンマ」を、私たちの従事する「斫り(はつり)のジレンマ」として置き換え、
「あえて手を止める勇気」が、仕事の質と速さをどう変えるかをお話しします。
明日からの作業が少しでも楽になり、あなたの職人としての評判や付加価値が上がるヒントになれば幸いです。
1. 道具におけるジレンマ:「研ぐ時間」はロスではない
コンクリートが硬くてなかなか進まない時。
「硬いから仕方ない!気合だ!」と、さらに力を込めて電動ハンマーを押し付けていませんか?
それが、例え話「木こりのジレンマ」で言うところの「木こり」状態です。
電動ハンマーのノミ先を見てみてください。
先端が丸まったノミ(ブルポイントやショットブル)は、打撃力が分散してしまい、本来の破砕力を発揮できません。
作業が進まないだけでなく、余計な振動が腕に伝わり、疲労だけが蓄積します。
そこに気づいてからが分岐点です。
- 木こり的思考: 「研いでいる時間がもったいない。このまま斫り続ければいつかは終わる。」
- 職人的思考: 「5分手を止めて、研ぐ/新しいノミに替える。」
ショットブルや平ノミの刃先をグラインダーで研ぐ時間は、わずか数分です。
しかし、その数分を投資するだけで、その後の1時間の作業効率は劇的に向上します。
👉【具体策】研げば復活!ショットブルの正しい研ぎ方
2. 環境におけるジレンマ:「準備」を惜しむと倍疲れる
現場の電源が遠かったり、タコ足配線だったりして、電圧が落ちている時。
「パワーが出ないなぁ…」とぼやきながら、ダラダラと作業していませんか?
電圧不足で無理にモーターを回すのは、作業が遅いだけでなく、大切な電動工具の寿命を縮めることにもつながります。
- 木こり的思考: 「車まで昇圧機を取りに戻る時間がもったいない。このまま騙し騙しやろう。」
- 職人的思考: 「一旦作業を止めて、昇圧機を取りに行く。」
往復10分のロスなど、正常なパワーを取り戻した機械ならすぐ取り戻せます。
「いい道具+適正な環境」=最強のコスパです。
👉【具体策】電圧不足を解消する最強ツール
3. 行動におけるジレンマ:こまめな掃除と提案する勇気
道具や環境の話だけではありません。実は、作業中の「行動」にこそ、このジレンマは潜んでいます。
① ガラで散らかったまま斫り作業を進めていませんか?(品質のジレンマ)
「掃除は最後にまとめてやればいいや」
そう思って、足元が斫りガラだらけのまま、切り付け作業を進めていませんか?
ガラで切り付けた根元が見えにくい状態で作業すれば、当然、斫り残し(ダメ)が出たり、逆に斫りすぎたりします。
終了間際にまとめて掃除した時に、斫り残しを何箇所も見つけてしまったらどうしますか?
残業してでも斫り直したり、翌日に斫り直すという余計な人工が発生する可能性もあります。
自分で斫り残しに気づければまだ良いのですが、暗くなってから慌てて掃除をして帰った結果、
後工程の業者にやり残しを指摘され、自分の知らないところで職人としての評判が下がっている…なんてことも。
💡ある程度の作業範囲や時間を決め、「こまめな掃除と確認をする」。
初心者もベテランも関係なく、最終的に確実に仕事を終わらせる最短ルートはこれに尽きます。
👉【具体策】なぜ掃除が評価につながるのか?
② 「指示されてないから」と無視していませんか?(信用のジレンマ)
「あそこ、図面と違って出っ張ってるけど…指示されていないからいいか」
「あそこの壁、絶対に誘発目地いると思うんだけど、わざわざ仕事を増やすのやめよう」
そう思って、報告もせずに自分の作業だけ終わらせて帰っていませんか?
後日、塗装や設備が仕上がってきてから「やっぱりあそこ斫って!」となったらどうでしょう。
狭くて機械が入らない、養生が必要、他業者の作業を止める…。当初の何倍もの手間とコストがかかります。
【手を止め、監督に「ここ、どうしますか?」と確認する】
現場に貢献している職人は、その場で斫れば5分で終わる作業が、後回しにすると半日仕事になることを知っています。
この「数分の確認」ができるかどうかが、「作業員」と「職人」の分かれ道です。
RC躯体の違和感に気付いた時、手を止めて現場に提案し無駄なコストを抑えることは、
現場からの信頼につながり、その評判は会社へと伝わりあなたの付加価値として成長していきます。
4. 安全におけるジレンマ:「一瞬の手間」か「一生の後悔」か
そして最後は、あなたの身体と人生に関わる、最も重要なジレンマです。
「ちょっとした作業だから、保護具をつけるのが面倒だ」
「暑いし息苦しいから、マスクを外してしまおう」
そう思って、保護具なしで作業を始めていませんか?
- 木こり的思考: 「今まで大丈夫だったから、今回も大丈夫だろう。着ける時間がもったいない。」
- 職人的思考: 「どんな小さな作業でも、必ず保護具を着ける。」
その「たった数秒の手間」を惜しんだ結果、コンクリート片が目に飛び込み失明したり、
長年の粉塵吸入で肺を患ったりしたらどうでしょう。
「あの時、手を止めてメガネをかけていれば…」という後悔は、一生消えることはありません。
「未来の自分の身体を守るために、今、手を止める」。
これこそが、最も賢い職人の選択です。
👉【具体策】「面倒くさい」に打ち勝つ、保護具選びのヒント
まとめ:「急がば回れ」は、現場の真理である
いかがでしたか?
「忙しいから手を止めない」のではなく、「忙しいからこそ、効率を上げるために手を止める」。
これが、現場で評価される「デキる職人」のマインドセットです。
本記事でお伝えした「木こりのジレンマ」を、現場に当てはめるとこうなります。
現場で「手を止める」べき4つの例
- ノミを研ぐ/交換する
… 潰れたノミや切れない刃で無理をしない - 環境(電源・動線)を整える
… 昇圧機・配線見直しなどで対策 - こまめに掃除して確認する
… 斫り残し・手直し防止 - 違和感を報告・相談する
… 図面と現場のズレを放置しない
☝️書き出したらキリがないこれらの例は決して「時間のロス」ではありません。
あなたの仕事の価値を高め、現場全体を助けるための、重要な「投資」です。
明日から現場で「あ、今ちょっと切れ味悪いな」「あれ、なんか変だな」と思ったら、あの木こりの話を思い出してください。
勇気を持って手を止めましょう。
その一呼吸が、最高の仕事を生み、そしてあなたへの「信頼」を積み上げていきます。

