【斫り(はつり)屋の夏】斫り作業特有の熱中症リスクと対策!実践的アプローチ
『真夏の斫り(はつり)作業は、想像以上に体力を消耗する…』
・💡はつり作業時に感じる保護具の適正使用×熱中症対策のジレンマ
『真夏の斫り(はつり)作業は、想像以上に体力を消耗する…』
そう感じている斫り屋の皆さん、
そして斫り作業に携わる事業者の方々へ。
近年、熱中症対策の義務化が進む中、
建設業の「当たり前」の対策だけでは、キツイと感じていませんか?
なぜか?
はつり作業時に必ず着用する防塵マスクや保護メガネ、粉塵の中での空調服…。
養生で囲っているため、【こまめな休憩】に抜け出せない…など。
💡この記事では、斫り作業の「現場のリアル」に即した熱中症リスクの解説から、
義務化した対策ルールのその先を行く実践的なアプローチまで、
斫り屋ならではの視点で、徹底的に掘り下げていきます。
(この記事には商品広告が含まれます)
▼まず、熱中症対策義務化の基本を知りたい方はこちら
2025年6月から何が変わるのか?義務化の内容や罰則について正確に知りたい方は、まずはこちらの記事からご覧ください。
👉 【斫り屋が解説】現場の熱中症対策義務化ガイド|事業者・一人親方の備え
・斫り作業の特有の熱中症リスク:なぜ基本対策だけでは不十分なのか?
各職種それぞれが特有のリスクのある建設業界ですが、
斫り作業には熱中症リスクを格段に高める特有の要因が存在します。
まずは、その正体を知ることから始めましょう。
1. 身体を守る「防塵マスク」が呼吸を妨げ、熱をこもらせるジレンマ
安全のために必須の防塵マスク。
ですが夏場は、最大の敵にもなり得ます。
顔面を覆うことで、呼気による放熱が阻害され、
マスク内の湿度と温度は、不快なほど上昇します。
さらに、フィルターを介した呼吸は、
無意識のうちに呼吸抵抗を増大させ、
私たちの体力を、確実に奪っていくのです。
2. 「炎天下以上」の過酷さ!密閉・密室というサウナ空間
時には、騒音や粉塵の飛散を防ぐため、
密閉された空間での作業は避けられません。
しかし、換気が不十分なその場所は作業員の体熱や機械の熱がこもり、
まさにサウナ空間へ変貌します。
風の通り道もなく、熱が体内に蓄積されやすい環境は、
屋外の炎天下以上に危険な場合すらあるのです。
3. 空調服が「役に立たない」可能性。粉塵環境の悩み
熱中症対策の切り札の定番、空調服。
しかし、粉塵が舞う斫り現場では、話が別です。
- ファンが粉塵を吸い込み、服の中はザラザラに…
人によっては肌荒れやかゆみを引き起こします。 - 吸い込んだ粉塵が首元から放出され、
顔にかかって目が痛くなるということも少なくありません。 - 高高温の密閉空間ともなれば、ファンから入ってくる風も粉塵交じりの熱風だけになってしまいます。
では、これらの特有のリスクに対して、
我々はどう立ち向かえば良いのでしょうか?
次章では、その具体的な解決策を見ていきましょう。
・斫り作業時に実践したい!効果的な熱中症対策
上記のリスクを乗り越えるには、
現場の状況に合わせた、具体的な工夫が不可欠です。
1. 防塵マスクの「息苦しさ」を軽減する2つの意識
安全上、絶対に外せない防塵マスク。
だからこそ、その負担を最小限に抑える工夫が必要です。
- 息苦しくなる前に!休憩のたびにフィルターの粉塵を掃う癖をつける
徐々に粉塵が詰まってくると、慣れのせいで知らず知らずに呼吸で得る酸素の量が減り、
疲れやすくなります。
『まだ苦しくないから大丈夫』ではなく、常に空気の通りを良くしておくことを心がけましょう。 - フィルター交換は「命綱」と心得る
メーカー推奨の交換時期は、あくまで目安。
粉塵濃度の高い斫り現場では、それより遥かに早く交換するのがおすすめです。
表面の粉塵を掃っても息苦しさを感じたら、それはもう交換のサイン。
消耗品だと割り切り、常に予備を用意しておきましょう。 - 「顔がダメなら、体を冷やす」発想の転換
マスクやメガネにより顔からの放熱が妨げられるなら、その分、首や体を直接冷やせば良いのです。
後述する水冷服やペルチェベストとの併用は、非常に有効な一手となります。
簡易的なネッククーラーも首を冷やすのに一定の効果があります。
2. 粉塵に強い!直接冷却デバイスの長所と短所
空調服が合わない現場の、新たな救世主。
それが「空気を取り込まない」冷却デバイスです。
ただし、それぞれに一長一短があるため、その特性を正しく理解することが重要です。
水冷服(冷却ベスト)
内部のチューブに冷水を循環させ、体幹部を効率的に冷却するタイプのウェアです。
- 主なメリット
- 粉塵に強い: 空気を吸い込まないため、粉塵環境でも安心して使えます。
- 広範囲を冷却: 体幹を広く冷やすため、深部体温の上昇を効果的に抑えます。
- デメリットと注意点
- 準備と補充の手間: 毎回の使用前に、タンクへ水と氷を入れる手間がかかります。氷が溶ければ冷却効果は落ちるため、長時間の作業では氷の補充が必要です。
- 水の重さ: タンクに水を入れる分、ある程度の重量が負担になる場合があります。
- 取り扱い注意: ポンプの作動音が気になる可能性や、チューブの破損に注意が必要です。
ペルチェデバイス付きベスト
ペルチェ素子という半導体で、体を直接冷やすタイプの冷却ウェアです。その冷却効果は非常に高く、まさに「着るエアコン」とも言えます。
- 主なメリット
- 粉塵環境に非常に強い: デバイスには排熱用の小型ファンがありますが、これはあくまでデバイス自体を冷やすためのもの。空調服のように大量の空気を服内に吸い込まないため、「粉塵による肌荒れ」や「服の中の汚れ」といった問題を大幅に軽減できます。
- 瞬間的な冷却力: スイッチを入れるとすぐに冷たくなるため、休憩中に体を急冷したい時などにも威力を発揮します。
- デメリットと注意点
- 冷却範囲が局所的: 冷却プレートが当たっている部分「だけ」が冷えるため、体全体の涼しさという点では水冷服に劣る場合があります。
- バッテリー問題: 高い冷却能力と引き換えに、バッテリー消費が激しく、持続時間が短い傾向にあります。長時間の使用には、重い大容量バッテリーや予備バッテリーが必須です。
- メンテナンスの可能性: 排熱用のファンやヒートシンクに粉塵が詰まると性能が低下するため、定期的な清掃が必要になる可能性があります。
3. 密閉空間を攻略する!換気・排熱の鉄則
熱と粉塵がこもる空間では、空気の流れを支配することが勝利の鍵です。
- 集塵機は「外に置く」が正解
大型集塵機や送風機は、作業空間の外部に設置し、ホースで吸引しましょう。
機械自体の熱を、現場に入れないことが重要です。 - 空気の「入口と出口」を作る
一方から新鮮な空気を吸気し、逆側から集塵袋などのフィルターを通して排気する。
この計画的な空気循環が、熱と粉塵を効率的に外へ追い出します。
同じ容量の送風機をそれぞれに設置することが理想です。 - スポットクーラーの設置は「排熱」までがセオリー
作業エリアや作業員を冷やす効果はもちろんですが、排熱ダクトを必ず外部へ出すこと。
これを怠ると、冷気と同時に熱をまき散らすだけになってしまいます。
4. 基本の熱中症対策を作業員全員に周知・徹底!
ここまで粉塵作業に特化した対策を書いてきましたが、「結局、当たり前のことか」と思うかもしれません。
しかし、どれだけ高性能な設備や装備を導入しても、この基本を疎かにしては絶対に意味がありません。
日々の作業の中で、以下の「当たり前」を徹底することこそが、命を守る上で最も重要なのです。
- 水分補給は「のどが渇く前」が鉄則
作業開始前から意識的に水分を摂り、体に潤いを蓄えましょう。
水だけでなく、スポーツドリンクや経口補水液を小分けにし、休憩中はもちろん、
作業の合間にも一口ずつこまめに補給します。塩分タブレットや梅干しなども有効活用してください。 - 休憩は「積極的に」。体をしっかり冷やす
1時間に1回、より過酷な高温下では作業内容に応じて30分に1回など、短い休憩を頻繁に挟むことが重要です。
アラームを設定し、強制的に休憩を取るのも良いでしょう。
休憩中は、直射日光を避け、日陰や冷房の効いた場所でしっかりと体を冷やしましょう。
もし現場事務所や休憩所にウォーターサーバーや製氷機が設置されていれば、冷たい水や氷を積極的に活用し、体の中から冷やすことも意識してください。
冷却スプレーや濡らしたタオルなどで太い血管が通る場所を冷やすとさらに効果的です。 - 体調管理は「自己責任」ではない、「全員の責任」
毎朝の検温や体調チェックを習慣にし、少しでも体調が優れないと感じたら無理をしない勇気を持ちましょう。「まだ大丈夫」が一番危険です。
そして、現場はチームワークが命。互いの顔色や動きに注意を払い、「いつもと違うな」「動きが鈍いな」と感じたら、積極的に声をかけ、休憩を促すことが、事故や熱中症を未然に防ぐことに繋がります。
めまい、頭痛、だるさなどの初期症状を知り、自身や仲間のサインを見逃さないようにしましょう。 - 作業服・装備の選び方にも工夫を
かつては「風通しを良くするため、体に密着しない服」が推奨されましたが、
近年は高機能なインナーウェアの登場で選択肢が大きく広がっています。
インナーは、体にぴったりと密着して汗を素早く吸収・発散させる「接触冷感コンプレッションウェア」が非常に有効です。汗による気化熱を効率的に利用して体を冷やし、肌をドライに保つことで汗による不快感を防ぎます。
その上に、空調ウェアや通気性の良い作業服を組み合わせることで、さらに快適な作業環境を作ることができます。
・【参考】現場で役立つ対策グッズ(製品選びのヒント)
この記事で解説した対策を実践する上で、私が現場で実際に活用しているものや、注目すべき製品の選び方について紹介します。
重要:最終的にどの製品が合うかは、ご自身の現場環境や体質、予算によって異なります。ここで紹介するものは、あくまで皆さんの製品選びの「第一歩」として、レビューなどをよく比較検討し、最適なものをお選びください。
【現場常備の定番!】水分・塩分補給
・経口補水液・塩分タブレット
これは多くの職人が実際に使い、その効果を実感している「基本装備」です。
選び方のポイント: 経口補水液は、すぐ飲めるペットボトルで常備するのも良いですが、
救急バッグに入れ持ち歩く場合は水に溶かすパウダータイプがおすすめです。
塩分タブレットは、味も重要ですが、クエン酸やミネラルが一緒に摂れるものだと、疲労回復にも繋がるので一石二鳥!。
以下製品例
経口補水液 オーエスワン(飲用の際の注意事項は👉【こちらの公式サイト】をご覧ください)
大塚製薬工場 経口補水液 オーエスワン
感染性腸炎・感冒による下痢・嘔吐・発熱、高齢者の経口摂取不足、過度の発汗を原因とした脱水症に。脱水を伴う熱中症にも。経口補水液 オーエスワンのシリーズのスタンダード。 消費者庁許可/特別用途食品 個別評価型病者用食品(公式サイトより引用)
大塚製薬 経口補水液 オーエスワン(OS-1)パウダー
オーエスワンパウダーは、脱水症のための食事療法(経口補水療法)に用いる経口補水液用粉末です。水に溶かしてご使用ください。軽度から中等度の脱水症における水・電解質の補給、維持に適した病者用食品です。下記の状態等を原因とした脱水症の悪化防止・回復、脱水症の回復後も下記の状態等における水・電解質の補給、維持にご利用ください。
また、脱水を伴う熱中症にもご利用ください。
(公式サイトより引用)
カバヤ 塩分チャージタブレッツ (公式サイトは👉こちら)
【斫り屋が注目】粉塵に強い!次世代の直接冷却デバイス
空調服が使いにくい斫り現場で、今後の普及に期待しているのが、「吸わない」タイプの冷却ウェアです。
はつり作業従事者として選ぶなら以下の点に注目します。
・水冷服水冷服(冷却ベスト)
注目ポイント: チューブで体幹を直接冷やすため、冷却効果は非常に高いです。選ぶ際は、バッテリーの持続時間、タンクの容量、そしてベスト自体の着心地(作業の邪魔にならないか)が重要な比較ポイントになります。
保冷剤の交換や準備、それを保管しておく冷凍庫やクーラーボックスの用意など、手間がかかるデメリットを理解した上で導入を検討できる方におすすめです。
以下製品例👇
アイスマン PRO XⅡ
・ペルチェデバイス付きベスト
注目ポイント: 半導体でピンポイントに体を冷やすため、瞬間的な冷却力に優れます。比較する際は、冷却性能の高さと、バッテリーの重量・持続時間というトレードオフのバランスをよく確認する必要があります。
メーカーにより首・脇・背中など冷却デバイスの位置が違うので、ベストの着心地と同時に冷やす位置も確認しましょう。
・まとめ:明日からできる!斫り現場の熱中症対策!
今回の記事では、斫り作業特有の熱中症リスクと、
その具体的な対策について、現場のリアルな視点から解説してきました。
最後に、明日から現場で実践していただくための重要なポイントを、
改めて確認しましょう。
【この記事の重要ポイント】
- 斫り現場の3大リスクを理解する
- 防塵マスク: 呼吸負荷と顔周りの熱を増大させる。
👉フィルターの意識的な管理と首や身体の冷却を併用で対策する- 密閉空間: 炎天下以上に危険な熱だまりになる。
👉換気・排熱システムの工夫が不可欠。- 粉塵環境: 粉塵濃度が高く空調服が合わない使えないこともある。
👉水冷服やペルチェベストなど「吸わない」冷却デバイスを検討する。- 個人の「準備」とチームの「連携」を徹底する
- 最強の対策は「勇気ある休憩」: 「まだいける」は禁物。こまめな水分・塩分補給と、計画的な休憩を徹底する。
- 装備を進化させる: 自分の体に合ったインナーや、現場環境に適した冷却デバイスを選ぶ知識を持つ。
- 仲間の変化に気づく: 最高の安全対策は、互いを気遣うチームワーク。「いつもと違うな」と感じたら、必ず声をかけ合う。
熱中症対策は、夏の期間だけの一時的なイベントではありません。
機械室・ボイラー室など、環境によっては季節問わず熱中症のリスクは訪れます。
ケガに対する安全対策と同様に、熱中症対策も自分と大切な仲間の命を守るために常に意識しておきたい「安全管理」の一つです。
この記事が、あなたの現場の安全対策を見直し、
明日から一つでも具体的な行動を起こすきっかけとなれば、
これほど嬉しいことはありません。
まずは安全・健康こそ、我々職人にとって最高の資産になるのです。
▼朝礼前のラジオ体操が熱中症対策になる?
しっかりやることで暑熱純化の効果があり、熱中症対策になると言われています。
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